式辞
ここに、2枚の写真があります。私が小学校卒業式の写真です。場所は、古い正門の前。ここには、木で作った校舎がありました。私は、まだ背が低かった。隣に私の母親がいます。そのまた隣には、友達が一人と、そのお母さんです。お母さんたちは、着物を着ています。そういう時代でした。
みんなも、この式の後、いろいろなところで写真を撮ることでしょう。そして、その写真を、今晩、家で見ることでしょう。 その時に、みんなにやってほしいことがある。感謝の言葉を伝えて欲しいのです。
お家の人に、「ありがとう」と。「今まで育ててくれてありがとうございました」と言ってください。言うのが恥ずかしかったら、文字でもいい。「ありがとう」と書いて渡したらいいんです。 わたしも、小学校の時、お家の人に言いました。
でも、この時に、伝えられなかった人がいます。私の祖父、おじいさんです。この卒業式の1年前に病気で亡くなりました。優しい祖父でした。もしかしたら、みんなにも、そういう人がいるかもしれない。その時は、仏壇があったらその前で手を合わせて、仏壇がなくてもいい。そっと手を合わせてね、「私は小学校を卒業しました。4月からは中学生です。今まで見守っていただき、ありがとうございました」こんなふうに、感謝の言葉を伝えてください。
一つの区切りです。このたった五文字の言葉で、家族はうれしいのです。今まで一生懸命に育ててきた。子供を育てるということは苦労もたくさんある。でも、この言葉で、苦労がすーっとなくなるんです。感謝の言葉を言うことができて初めて、みんなは一つ大人になる。中学生になる。
保護者の皆様、お子様のご卒業、誠におめでとうございます。卒業生の入場してくる顔を見ながら、我が子が生まれてきたときのことをいつも思い出します。病室に差し込んできた日差し、生まれてきたときのか細い産声、生まれてきた我が子を見て涙を流す妻、そして、ぎゅっと握った小さな手。そんな我が子が、こんなにも大きくなった。うれしかったこともあったことでしょう。また、悩んだ日々もあったことでしょう。でも、今日、子供たちは立派に卒業します。その子育てでよかったのです。子供たちには、未来がある。未来しかない。卒業生には、この小学校生活を思い出すことがないくらい、もっと楽しく、もっと充実した生活を送ってほしいと思います。
ご卒業、本当におめでとうございます。
終わりになりましたが、ご来賓の皆様、また、地域の皆様、本日ご臨席を賜り、令和5年度の卒業式を、このように盛大に挙行できますこと、大変うれしく、感謝申し上げます。73名の子供たちが健やかに育ちますように、これからも温かく見守り続けていただきますようお願い申し上げまして式辞といたします。
令和6年3月22日
宇和町小学校長 西川 浩司